小説「トンイ」

「トンイ」のノベライズ本が出ていることは知っていましたが、今までに見たドラマのノベライズ本って、たいてい脚本に少し描写が加えられた程度のものでしたので読もうと思ったことはありませんでした。ところが、たまたま図書館で下巻を見つけてパラパラと立ち読みしたところ、なかなかしっかりと小説になってましたので借りてきました。


「トンイ」(上)(下)
キム・イヨン、チョン・ジェイン著 
金重明 訳
キネマ旬報社


本の末尾にドラマのキャスト一覧が掲載されていましたし出版が2010年ですので、ドラマの原作本というよりは、ドラマの人気が高かったので放送終了後に小説化したのだと思います。
読んでみると、いくつかのエピソードがドラマと違っています。事件が起こる順番が違っていたり、事件の中身が入れ替わっていたり。一番違うのは王様のキャラクター。チ・ジニさんが演じる明るく楽しく時には厳しい王様ではなく、小説の王様は「火のような性格で剛直。滅多に笑うこともない」というキャラです。
(個人的にはこれはこれでいい感じです。「ベートーベン・ウィルス」のキム・ミョンミンさんあたりが演じてくださると素敵なのでは?と思わず想像してしまいました)。


前回のドラマでは、トンイが身分を偽りコムゲに関わった罪で宮廷を追放されましたが、小説ではトンイが身分を隠していたことに王様が激怒し、トンイから距離をおいたことになっています。ちょうど処分を下そうとした時に最初の子どもが亡くなり、悲しみに打ちひしがれているトンイを見て「これ以上何かを奪う必要があるだろうか」と王様自ら処分をやめたのです(しかも、何とチャン・オクチョンがこれ以上の処分はしない方がいい、と王様に忠告しています!)。で、本の方はさっさと読んで返してしまったので確認できませんが、「二度とトンイには会わぬ!」という言葉はなかったように思います。最初の子どもが亡くなって数ヵ月後に、泥酔した王様がトンイのもとを訪れる…というエピソードは健在でしたが、「二度と会わぬ」と言っていなければ何ら問題はありませんし、私としてはこちらの方が受け入れやすかったです。やはりトンイが宮廷を追放され、2番目の子どもが宮廷の外で育つという設定には無理があるように思われるのです。


また小説では、トンイがまだ女官だった時に父や兄の無実は証明されていましたし、王妃だったチャン・オクチョンたちの陰謀を明らかにして、平民に降格されていた元の王妃の復位に貢献したことでトンイは一躍 賤民たちの「スター」になりました。「賤民でも、あんなに立派な働きができるんだ」と、賤民が希望を持てるようになったのです。なので、トンイが側室になった時も王子を産んだ時も賤民たちが自分のことのように喜び、自分の子どものように王子を大切に思ったそうですし、トンイも慎ましい暮らしをして賤民たちに援助物資を届けていたということです。
(承恩尚宮の時も、側室になってからもトンイが着たきり雀だったのには、そういう理由があったようです)。


ドラマと小説の違いを比べるうちに、小説向きのシーン、ドラマ向きのシーンがあることに気がつきました。例えばドラマで王様が物思いに耽るシーンがあると、その時々の王様の思いを想像しながら見ていましたが、それが小説では言葉で描写されることため、よりわかりやすく、また自分の想像と違う個所は「なるほど!」と新しく発見することもできて興味深かったです。逆に映像を見ることで人物の心の動きが文章を読むよりよくわかる個所、街や建物の作りや人物の動作から理解が深まる個所もありました。


ドラマでは視覚に訴えやすいストーリーが採用され、小説では文章表現に適したストーリーに変えられることがある、という言い方もできそうです。読みながら、「うん、確かにこの場面はドラマをそのまま小説にするより、こういう風に変えた方が落ち着くなあ」と思ったところもありました。
あと、ドラマは途中から人気が出て当初予定されていた放送回数よりも延長されたため、さらにいろいろなエピソードが必要になったのでしょう。ドラマのチャン・オクチョンは小説以上にたくさんの悪だくみを企てています。放送回数のため実際以上の悪女に仕立て上げられてしまったんですね。


ついでですが、私がドラマを見始めた時、この時代の専門用語がわからないので、ドラマのストーリーもわかりにくい…と感想に書きましたが、小説を読んでも最初の部分はやはりわかりにくかったです。登場人物の紹介に加え、それぞれの過去の因縁などが一度に出てきて、それぞれが結構複雑なので頭を整理しながら読み進めないといけません。それを映像で一気に出されると、わかりづらくても当然だったようです。


小説は(上)(下)巻ともにかなりの分厚さですが、もし文庫本になったら買ってもいいなと思っています。
次回からの最終章のお話がある程度進んだら、もう一度 下巻を借りてきて改めて比較してみたいとも思っています。




mkm





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Author:そよかぜおばさん
韓国ドラマ「春のワルツ」で描かれなかった15年間に興味を持ち、何とかこの空白を埋めてみよう!と皆さんからアイデアを頂きながら進めてきました。ドラマ後の物語(ピアニスト クリス・ユンの復活)も同時進行させています。「空白の15年」はまだ6年ほど残っていますが、「復活編」はひとまず完結いたしました。


これとは別に趣味のクラシック音楽の話、印象に残った本やテレビ番組、映画の感想など思いつくまま気の向くままにお話ししたいと思います。

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