福間 洸太朗 ピアノ・リサイタル 「祖国への思い」

昨年はチケットを買いながら台風の前に涙をのんだ福間洸太朗さんのリサイタルに、2年ぶりに行くことができました。

プログラムはこちらです。
     

グリーグ:「抒情小品曲集」より 
    第3集 第3曲 故郷にて
      第2集 第4曲 ノルウェー舞曲
      第2集 第5曲 ノルウェー舞曲(春の踊り)
      第6集 第6曲 郷愁
      第7集 第6曲 家路

ショパン:マズルカ第49番ヘ短調 op.68-4
      ポロネーズ第6番変イ長調 op.53 「英雄」
      バラード第1番ト短調 op.23

スメタナ(福間洸太朗:編曲):モルダウ

・・・・・(休 憩)・・・・・

アルベニス:組曲「イベリア」より
       第1曲 喚起(エヴォカシオン)、第3曲 セビーリャの聖体祭

ヒナステラ:アルゼンチン舞曲
       第1番 年老いた牛飼いの踊り
       第2番 優雅な乙女の踊り(粋な娘の踊り)
       第3番 はぐれ者のガウチョの踊り

スケルトン:「ジョニーが凱旋する時」の主題による25の変奏曲 


北欧ノルウェーを出発してヨーロッパを巡り、後半はアルゼンチンやアメリカへ。「音楽の世界旅行」を楽しんでください、というコンセプトのリサイタルでしたが、この世界旅行、序盤は少々ピアノが荒れ気味? なかなかいうことを聞いてくれないのか、ペダルを踏み終えた際に不自然な残響があったり、「以前はこんな弾き方してなかったのにな」と感じられる音が聞こえたり…ということがあって、少々 「??」 な箇所もありましたが、ショパンの途中から少しずつ解消されて、休憩の後はもう完全に「洸太朗ワールド」全開!で、思いきり楽しませていただきました。

ショパンのポロネーズ、バラードとスメタノのモルダウ以外は知らない曲でしたが、グリーグの小品は可愛らしく楽しく聞ける作品でしたし、ショパンのマズルカ第49番は、ショパンの生涯最後の作品だそうで、哀愁漂う曲調に晩年のショパンの孤独や不安が現われているようでした。

ご本人編曲のスメタナの「モルダウ」は、3年前のリサイタルで初めて聞いて大変感動した曲です。その3年前の公演のために編曲し、その後は演奏するつもりもなかったのに、お客様から好評をいただき、CD会社の方からもレコーディングの話をいただいて、先月発売のCDに収録することができたこと、「楽譜はないんですか?」とよく聞かれるんだけど、まだスケッチ程度のものしかなくて、いずれはちゃんとしなければと思っているけれど時間がないこと、そのため手伝ってくれる人と楽譜を出版してくれる出版社を募集していることなどを話されました。(そんなこと言ったら、出版社はともかく、腕に覚えのある音大生なんかが殺到するんじゃない?、なんて)^^

後半は知らない曲オンパレード。どんな曲を聞かせていただけるのかなと楽しみに耳を傾けていましたが、アルベニスの2曲目「セビーリャの聖体祭」は聞いたことあって、ちょっと嬉しかったし、これまで聞いたことがなかった1曲目の「喚起」の、心の奥から何かを呼び起こすような調べは心に響きました。

ヒナステラの「アルゼンチン舞曲」は全体的に不協和音が多かったのですが、音の組み合わせがこれまで聞いた不協和音とはひと味違う感じ。(アルゼンチンでよく使われるものなのか、ヒナステラさんが好むものなのかはわかりませんが) 第1番の「年老いた牛飼いの踊りは、ほとんど全曲が不況和音です。不協和音は正直あまり好きではありませんが、この曲は「次はどうなるのかな?」と楽しく聴けたのが不思議です。それにしてもアルゼンチンの年老いた牛飼いは、あんなに激しく踊るんでしょうか? 第2番の「優雅な乙女の踊り」はタイトルのイメージとは少し違って、少女の不安や戸惑いや希望を感じさせるような、しっとりとした音楽でした。第3番の「はぐれ者のガウチョの踊り」はとてもエネルギーあふれる感じで楽しく聴くことができました。

最後の「ジョニーが凱旋するとき」の演奏前に、この曲を作曲したスケルトン氏について、説明がありました。
福間さんが14歳でアメリカの14~18歳の対象のコンクールに出て、6位入賞を果たした時の審査員の一人がスケルトン氏で、コンクール終了後に「とてもピュアな音楽性を持っているので、このまま勉強を続ければ立派な音楽家になれますよ」と励ましてくださり、その後、クリーブランド国際コンクールで優勝してニューヨークでリサイタルを開いた時も駆けつけてくださった、福間さんにとっては恩人といえる方で、その方の作品を演奏できることが本当にうれしいということでした。

「ジョニーが凱旋するとき」のテーマは、お聞きになった方も多いのではないでしょうか。
            ↓
https://www.youtube.com/watch?v=xD_ddHg_HTw

元々は歌曲で、既存の曲に南北戦争に行ったフィアンセの帰還を願う女性のための歌詞がつけられたものだとか。それが様々に姿を変え、高らかに歌い上げられて、リサイタルの最後を飾りました。

欧州から南米→北米を巡った音楽の世界一周。最後は日本に帰りました。

アンコールの1曲目は、溝上日出夫 作曲の「こもり歌」。
懐かしい調べに、ほっとした気持ちになりました。
2曲目は、この日のプログラムとは特に関係のない、ガーシュイン作曲の「プレリュード第3番」。たいへん速いパッセージが散りばめられた、美しい曲でした。

以前に聞いたリサイタルではアンコール2曲でおしまいだったので、今日もそうかな?と思っていたら、「実は、このコンサートのために特別な曲を用意しています」って。
それが、松尾 泰伸さん作曲の「天と地のレクイエム」。
           ↓
https://www.youtube.com/watch?v=TPZpDcclwAA

この曲は、羽生結弦選手がエキシビションに使った曲です。
今年、福間さんがフィギュアスケートの選手とコラボしたこと、スケーターの皆さんや、フィギュアスケートの関わるアーティストの方々との出会いが、これからの自分にとって、とても大きなものになったと話されました。

この曲を作られた松尾泰伸さんとも神戸のアイスショーの時に出会われたそうですが、楽譜がほしいとお願いしていたら、先月送っていただけたそうです。「十分に準備する時間はなかったけれど、東日本大震災で亡くなられた方、今年各地で起こった災害で亡くなられた方、そして昨夜パリで起こったテロの犠牲になられた方のために演奏します。作曲された松尾さんが今日この会場に来られているので、作曲者ご本人の前で、そしてこんなに大勢のお客さんの前で演奏すると思うと足の震えが止まりません」…と言いながら、切ないメロディーを力強くと演奏されました。

福間さんは高校卒業後パリに4年間留学されていたそうです。自分にとって第2の故郷とも思っている街での惨劇に本当に心を痛めておられたようでした。パリのあちこちで起きたテロの現場の一つがコンサート会場でした。私はこの日、お昼前に家を出たのでパリのテロについて詳しいことを知ったのは帰宅後でしたが、自分と同じように音楽を楽しんでいた多くの方が犠牲になられたことがショックで、あまりのことに心が痛んでなりませんでした。

音楽を愛し、スポーツを愛し、その楽しさや喜びを人々と分かち合えるのも平和であってこそ。自分は日々穏やかに暮らし、ささやかな楽しみを得ることもできているのに、楽しみはおろか、故郷に住み続けることがかなわずに、欧州各地に避難しようとしている何万もの難民の方々、テロに被害に遭われた大勢の方々がおられる現実を突きつけられた気がして、胸が苦しくなりました。憎しみの連鎖が少しでも早く断ち切られるよう、祈ることしかできない自分がもどかしくてなりません。

コンサートを楽しんできたのに、なんだか重くなってしまいました。
「モルダウ」の収録されたCDを買ってきました。なかなか良いので、これについてはまた改めてお話ししたいと思います。




mkm






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コメント

私も感動しました!

mkmさま、こんにちは。
素晴らしい感想にひれ伏してます。福間さんに是非読んでいただきたいわ( ´ ▽ ` )ノ

私は、20日サントリーホールで福間さんの『モルダウ』を初めて聴きまして。。。そのまま持って行かれまして、mkmさまと同じCDを衝動買いしてしまいました。
ピアノだけでこんなに厚みというか、深みのある演奏が出来るものなんだなあと。。
素人なのでその程度の表現しかできないのですが、モルダウの流れそのまま体験したような気がしました( ´ ▽ ` )ノ

大阪で『天と地のレクイエム』を弾かれたことは風の便り(笑)で知っていましたが、そうですか。作曲家さんもいらしてたのね。私も聴きたかったわ。羨ましい!!
  • 2015-11-24 07:28
  • URL
  • ちょうちょ♪ #On/TYujw
  • Edit

まあ、うれしい!

「モルダウ」すごかったでしょう? 聴いてくださってうれしいです。\(^o^)/

私も初めて聴いた時には、ピアノでこんなにすごい演奏ができるんだ、とただただ感動&びっくり。CDで聴くと、コンサートホールで聴くのと全然違って、またまたびっくりでした。(これについては、また改めて)

「天と地のレクイエム」は、作曲家の方がいらっしゃったから弾いてくれたのかも?とも思います。サントリーホールでのプログラムも聴いてみたいなあ。
  • 2015-11-24 15:15
  • URL
  • mkm #0ls4tc0A
  • Edit

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そよかぜおばさん

Author:そよかぜおばさん
韓国ドラマ「春のワルツ」で描かれなかった15年間に興味を持ち、何とかこの空白を埋めてみよう!と皆さんからアイデアを頂きながら進めてきました。ドラマ後の物語(ピアニスト クリス・ユンの復活)も同時進行させています。「空白の15年」はまだ6年ほど残っていますが、「復活編」はひとまず完結いたしました。


これとは別に趣味のクラシック音楽の話、印象に残った本やテレビ番組、映画の感想など思いつくまま気の向くままにお話ししたいと思います。

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